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第5回 「評価」をどう考えるか

道徳キーワード

2017年3月10日 更新

学習指導要領の中から、ぜひ知っておきたい「キーワード」を取り上げます。長年にわたり道徳教育をリードしてきた6人の先生が、リレー形式で解説します。

解説:富岡 栄(麗澤大学大学院准教授)

なぜ道徳科で評価を行うのか

道徳の教科化で、評価の方法や在り方が話題となっています。ここではまず、なぜ評価を行うのか、基本的なことから考えましょう。道徳教育における評価の意義は二つあります。

  1. 児童生徒が、自分自身の道徳的成長を実感し、学習意欲の向上につなげること
  2. 教師が、指導計画や授業改善に役立てること

道徳科における評価は、児童生徒の道徳的なよさを認め、励まし、伸ばすためのものであることが望まれます。これは、道徳性が人格に関わるものであると考えられるからです。

教師は、評価というと、数値による評定を考えがちです。しかし、道徳科における評価は、それとは全く異なり、記述式で行います。今回の教科化で、指導要録に道徳科の欄が設けられることとなりました。この欄に、道徳科の授業内での「学習状況」や「道徳性に係る成長の様子」を記述し、評価することになります。

道徳科における評価方法

道徳科における評価では、他の児童生徒と比較することはありません。また、他の教科のように、目標に到達したか否かを見取っていくこともありません。あくまでも、個々の児童生徒に注目して、個人の中でどれだけ道徳的成長があったかを見取ることになります。評価方法としては、次のような方法が考えられます。

1.観察法
児童生徒の学校生活の様子を観察することで評価する方法

2.面接法
児童生徒の学校生活の様子を観察することで評価する方法

3.ノートや作文による方法
道徳ノートやワークシートなどに記述された文章や作文から評価する方法

4.ポートフォリオ評価
道徳ノートやワークシート、役割演技などを収録した映像、プレゼンなどの成果物を一元化して総合的に評価する方法

5.エピソード評価(※)
児童生徒が道徳性を発達させていく過程で発言したことや記述したものを、エピソード(挿話)の形で累積し、評価する方法

これらの評価方法は、それぞれに特徴があり、一長一短があります。したがって、評価方法は一つに限定するのではなく、相互補完的に取り入れることが望ましいでしょう。

道徳科における評価は、何よりも、子ども自身が自分のよさに気づき、そのよさを伸ばしていくためのものであるべきだと思います。ぜひ、このことを基盤に据えて、子どもの道徳的成長を願い、評価に取り組んでいきましょう。
 

キーワードまとめ 「評価」をどう考えるか

児童生徒の道徳的なよさを認め、励まし、伸ばすために行うことが望まれる。その際、「学習状況」や「道徳性に係る成長の様子」について記述式で見取ること。

 

※エピソードには、短期エピソードと長期エピソードがあります。短期エピソードは、1時間の道徳授業の中での発言や記述内容を基に記す挿話で、長期エピソードは、道徳授業だけでなく、学校生活の中での言動や記述内容を基に、長期的な視点で記す挿話です。


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