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アクティブ・ラーニング Q&A 第6回

アクティブ・ラーニングQ&A

2016年10月7日 更新

冨山 哲也 十文字学園女子大学教授

今、関心が高まる「アクティブ・ラーニング」。先生方からの疑問にお答えします。

冨山哲也 (とみやま・てつや)

十文字学園女子大学人間生活学部児童教育学科教授。東京都公立中学校教員、あきる野市教育委員会、多摩教育事務所、東京都教育庁指導部指導主事を経て、平成16年10月から文部科学省教科調査官(国語)、国立教育政策研究所教育課程調査官・学力調査官。平成20年版学習指導要領の作成、全国学力・学習状況調査の問題作成・分析等に携わる。平成27年4月から現職。第1期<絵本専門士>。

第6回 教師の役割は、どう変化する?

Q:授業の中で、教師の役割は変化しますか。

A:生徒の主体的な活動を支援しながら、要所で適切な指導をすることが大切です。

アクティブ・ラーニングと対照的な授業としてイメージされるのは、教師による講義形式の授業でしょう。このような授業の中では、教師は教えるべき内容を深く理解し、それをわかりやすく伝えることが役割になります。難しい内容を理解させるために、詳しい説明資料やワークシートを作ったり、スモールステップを設けて段階的に考えさせたりするような工夫をします。

これに対してアクティブ・ラーニングを取り入れた授業における教師は、生徒自身が課題の解決のために必要な情報を集めて自分の考えをもち、交流を通して考えを深め表現することができるよう、支援していくことになります。教える役割から、生徒自身の「できる、わかる」をリードする役割への変化といえるかもしれません。

例えば、聞き手を引き付けるスピーチの工夫について学習する場面を考えてみましょう。講義形式の授業では、「よいスピーチの10のポイント」などと内容を整理したプリントを配り、それに基づいて取り組ませるような展開が考えられます。いっぽう、アクティブ・ラーニングを取り入れた授業では、小学校での学習経験を思い出しながらグループでスピーチ(リハーサル)を聞き合い、工夫点を整理して本番のスピーチに生かすといった展開が考えられます。後者の授業では、生徒に学習活動の見通しをもたせることが重要です。また、スピーチのテーマの設定・意図的なグループ編成・タブレットPC等の機器の準備なども、教師の役割として大切です。こうした支援により、生徒の主体的な学習が促されます。

ここで注意したいのが、教師は単なる学習活動の「進行役」ではないという点です。生徒の主体性を尊重しつつ、要所で適切な指導をすることが重要な役割です。例えば、

  • グループ学習の前に個人の考えをしっかりもたせるようにする。
  • グループ学習が停滞していれば具体的な検討の視点を示す。
  • 複数のグループの意見を関連づける。
  • 考えをより深めることを促す発問をする。
  • グループの発表の際には、適切な評価のコメントをする。

等の指導です。このような教師の関わりを抜きに、「深い学び」は成立しません。

生徒のさまざまな学習の状況に対応するためには、講義形式の授業にも増して、丁寧な教材研究が必要であることは言うまでもありません。


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