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第1回 新しい学習指導要領で大事なことは?

美術の授業お悩み相談室

2019年12月26日 更新

上野 行一 元高知大学大学院教授

授業のお悩み、一人で抱え込んではいませんか? 美術教育の専門家、上野先生が温かく受け止めます。

第1回 新しい学習指導要領で大事なことは?

A 「どのように学ぶか」「どのような力が身についたか」を大事に。

新しい学習指導要領では、特に学ぶことと社会とのつながりを意識し、「何を学ぶか」という知識に加えて「どのように学ぶか」や「どのような力が身についたか」という学びの質や深まりを重視する方向に舵が切り替えられました。それに伴い、三つの資質・能力(①知識及び技能 ②思考力、判断力、表現力等 ③学びに向かう力、人間性等)の育成、主体的・対話的で深い学びによる授業改善や、教科横断的な視点は、全教科に通じる点です。

美術の先生方に心がけていただきたいことを、あえて一言で示すと、「表現と鑑賞の活動を通して、造形的な見方や考え方を働かせ、生活や社会の中の美術や美術文化と豊かに関わる資質・能力を育成すること」です。

今回の改訂では、「どのような視点で物事を捉え、どのような考え方で思考するのか」という、見方・考え方が各教科で定められました。美術科の特質に応じた造形的な見方・考え方は、表現や鑑賞の活動を通して、よさや美しさを感じ取る力である感性や、想像力を働かせ物事を造形的な視点(形や色彩などの造形の要素に着目してそれらの働きを捉えたり、造形的な特徴からイメージを捉えたりする視点)で捉え、自分としての意味や価値をつくりだすものです。

その力を育成するための、「主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善」の視点を具体的に示します。

●主体的な学びを促すために
興味や関心をもたせるための工夫や、生徒が見通しをもって題材に取り組めるよう、ノートやスケッチブックに、アイデアスケッチや学習記録をまとめて蓄積しておくこと(ポートフォリオ)などが考えられます。

●対話的な学びを促すために
個人で考える場と、グループで意見交換し、考えを広げ深める場を、意図的に設定しましょう。

●深い学びを促すために
造形的な見方・考え方を働かせて、造形的な視点から問題を発見したり、自分としての意味や価値をつくりだしたり、表現と鑑賞の資質・能力を相互に関連させながら学習する授業を組み立てましょう。

上野先生による、さらに詳しい学習指導要領の解説はこちらから。

新しい学習指導要領の方向性

1月上旬公開予定の次回は、「発想や構想の力を育てるには?」という質問にお答えします。

Illustration: 北村人

上野 行一(うえの・こういち)

「美術による学び研究会」会長。高知大学大学院教育学研究科教授、帝京科学大学教授を務める。『私の中の自由な美術』、『風神雷神はなぜ笑っているのか』(光村図書)など著書多数。NHK高校講座「芸術(美術Ⅰ)」を監修。光村図書中学校「美術」教科書の著作者でもある。

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