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第4回 「表現」と「鑑賞」を関連づける、とは?

美術の授業お悩み相談室

2020年2月7日 更新

上野 行一 元高知大学大学院教授

授業のお悩み、一人で抱え込んではいませんか? 美術教育の専門家、上野先生が温かく受け止めます。

第4回 「表現」と「鑑賞」を関連づける、とは?

A 表現の学習で考えることと共通する視点で、鑑賞の学習を組み立てましょう。

例えば、ポスターを制作させるときに、コンクール入選作品や有名なポスターを鑑賞させ、そこからヒントを得て生徒がアイデアを練り、制作する……というような手順は、あまり好ましくありません。なぜなら、ポスター制作のための参考として作品を見せるだけでは、鑑賞が表現を補助する手段として終わってしまうからです。

表現と鑑賞を関連づける指導には、思考力・判断力・表現力等を育成するねらいがあり、「関連づける」ということは、表現の活動における発想や構想の資質・能力と、鑑賞の活動における鑑賞の資質・能力が相互に関連して働くようにすることを意味します。

そのためには、「ポスターを制作すること」が学習の中心にならないように気をつけましょう。発想や構想と、鑑賞の双方の学習に重なることを主なねらいにすることが大事です。

例えば「多くの人たちに、効果的にメッセージを伝えるデザインの工夫」を、ポスターの鑑賞を通して学び、それを表現の発想や構想に生かして制作し、完成したポスターをその視点から鑑賞する……というような授業の組み立てを行うことが大事なのです。

2月中旬公開予定の第5回は、「鑑賞の授業に自信がもてない…」というお悩みにお答えします。

Illustration: 北村人

上野 行一(うえの・こういち)

「美術による学び研究会」会長。高知大学大学院教育学研究科教授、帝京科学大学教授を務める。『私の中の自由な美術』、『風神雷神はなぜ笑っているのか』(光村図書)など著書多数。NHK高校講座「芸術(美術Ⅰ)」を監修。光村図書中学校「美術」教科書の著作者でもある。

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