
青山先生の国語教室
2017年7月20日 更新
青山 由紀 筑波大学附属小学校教諭
子どものモチベーションをアップさせる、国語の授業アイデアをご紹介します。
第7回 漢字が好きになる―中・高学年編(2)―
前回に続き、中・高学年におすすめの漢字学習のアイデアをご紹介します。
漢字先生
新出漢字を学習する際、子どもが先生になって漢字を教える学習です。子どもたちは、一人1文字ずつ、新出漢字を担当します。その漢字については、責任をもって、学級全員に教えなければならないということにします。
まずは、教師が見本を見せます。例1のような縦長の模造紙に、新出漢字と以下の内容を書きます。そして、それを持ち時間3分で解説します。
- 新出漢字(一画目は赤で書く)
- 読み方(音読み、訓読み)
- 使い方(熟語や例文)
- 画数
- 筆順
- 書くときに注意するところ(字形のポイント)

上記のような必須情報のほか、反対の意味の言葉(上司⇔部下)、似ている漢字(管、菅、官)、漢字の成り立ちなども入れて、持ち時間の範囲であれば、それも発表してよいことにします。
それでは、実際の「漢字先生」の様子をご紹介します。
―筑波大学附属小学校4年 「漢字先生」の様子―
- 新出漢字:「法」
発表者は黒板の前に立ち、模造紙を見せながら、まずは、用意してきた内容をひととおり話します。
発表者 音読みは「ホウ」です。
使い方としては、「作法」「方法」「用法」「文法」など。
「ハッ」「ホッ」は、高校で習う読み方です。特別な読み方として「のり」があります。
部首はさんずいで、総画数は8画です。
ここまでで質問はありますか?
ここがポイント
解説の後には、質問タイムを設けるようにします。みんなからの質問に答えられるかどうか、発表者がいちばん緊張する場面です。
児童A さく…ほう、さほう(作法)の意味は何ですか。
発表者 「さほう」ですね。礼儀や行儀です。
ここがポイント
発表者は熟語の読み方や意味をあらかじめ調べておきます。
児童B この漢字を書くときに気をつけることはありますか。
発表者 それほどありません。
児童C 「ハッ」や「のり」はどんなときに使うんですか。
発表者 「ハッ」は「ご法度」。「のり」は、名前の「法子さん」などに使われていることがあります。
「法子さん」の解説のところで、複数の児童から、「ああ!」「そういえば…」といった声が上がりました。
発表者 他に質問はありませんか。
質問が途切れたところで、空書きに入ります。
発表者 それでは、僕がなぞるので見ていてください。いち、に、さん……。
(筆順どおりに空書きをしてみせた後、クラス全員に呼びかける)
発表者 みなさんもいっしょにやってみてください。
(全員で空書き)
発表者 次は、みなさんだけでどうぞ。
(全員が空書きするところを、発表者は前から見ている)
発表者 これで終わります。
以上が「漢字先生」の流れです。このような発表を、1日に2~3文字(2~3人)ずつ行います。国語の授業の中に、継続的な帯単元として位置づけるとよいでしょう。
慣れないうちは、発表後に教師がアドバイスをすることが必要です。
この日は、質問にうまく答えられない発表者がいたので、次のようなことを話しました。
- 調べたことは、必ずノートに書いておく(前に立つと忘れてしまうことがある)。
- 質問されてわからないときは、次の授業までに調べておく(漢字先生は、最後まで責任をもって、クラス全員に漢字を教えなければなりません)。
他の人の発表を見ることによって、子どもたちは解説の内容をよく工夫するようになります。1年の間に、クラス全員が2周できるのが理想です。1周目よりも成長した「漢字先生」になってくれることでしょう。(談)
次回は、スピーチ活動の工夫についてお伝えいたします。
青山由紀(あおやま・ゆき)
東京都生まれ。筑波大学大学院修士課程修了。日本国語教育学会常任理事。全国国語授業研究会常任理事。著書に『古典が好きになる』(光村図書)、『板書 きれいで読みやすい字を書くコツ』(ナツメ社/樋口咲子共著)、『子どもを国語好きにする授業アイデア』(学事出版)などがある。光村図書小学校『国語』教科書編集委員を務める。