本の補修・修理について
2015年1月1日 更新
赤木かん子 児童文学評論家
学校図書館に必要なものは何か、どうやって作ればよいのか、壊れた本をどうやって修理すればよいのかなど、実際の写真を示しながらご紹介します。
無線綴じの本には安くておもしろくて子どもたちが大好きでよく読む本が多いのですが、よく読まれる分、よくページが抜けてしまうので、あまり学校図書館には入っていません。でも、このタイプを入れられたら特に予算の少ない小学校図書館はかなり助かるよね? そこで和本の製本屋さんに聞いたところ、「普通の三つ穴綴じでいいんじゃない?」と言われ、やり方を教えてもらいました。で、試したところ大成功! 簡単で、たいしてお金もかからないのに壊れず、見た目も変わりません。はじめは電動ドリルがちょっと恐いですが、すぐに慣れますよ。
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まずは道具。
- 糸綴じする本
- 針と麻糸
- 電動ドリル
- のりつきビニールブックカバー
- 専用ハサミ
(※電動ドリルは工務店に売っています。慣れないうちはコードつきの軽いものでかまいません。1,500円くらいです。バッテリーつきのものは重く、高価ですが、道具というのは本当に値段相応で、10,000円近くするものはため息がでるほど使いやすいです。針、糸、のりつきブックカバー、ハサミ、定規などは埼玉福祉会やその他図書館用品店で売っています。)
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表紙カバーを外します。
このやりかたは、装備する前、買ってきたばっかりのときにやります。「本屋さんがいつもビニールカバーをかけてくれるの」という学校は、このタイプのものだけ、かけないで納品してもらってください。
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本の背から5ミリくらいのところに穴を三つ(A4版の本は四つ)開けます。
ここではわかりやすいように黒い点をつけました。もちろん一度わかってしまえば、もうこんなこといちいちしなくてもいいし、どこに開けるかもテキトーでいいです。
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下に台を置き、ドリルの歯を垂直に立ててまっすぐに穴を開けます。
垂直にドリルを立てないと本にナナメに穴があきますよ。力はたいしていりません。ドリルの重みで穴はあきます。このときにスイッチで向きが変わるドリルだと(この写真のものはそうです)抜くときに力がいらないのでラクです。また、子ども用のイスの上に、板か壊れた辞書とかを乗せて、ひざで押さえてやるとやりやすいです。
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糸止めを作ります。
糸のくぐらせ方が少し特別なので、写真を拡大してみるとわかりやすいと思います。針に糸を通して、通した先の糸を少しほぐし、針を写真のようにくぐらせます。
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これで糸止めができました。
ちなみにこのやりかたは、軍手人形を作っている高田千鶴子さんに教わったのと同じでした。
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糸とじする本を三回巻いて糸の長さの見当をつけ、糸を切ります。
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三つ開けた穴のまんなかの穴に下から針を通します。
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どっちでもいいですから、はじの穴に針を通し、糸が抜けないように指で押さえます。
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次に反対側の穴に針と糸を通します。
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まん中の穴にもどします。
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つまり、この図のような順番です。
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まんなかの糸を糸の両はじではさむようにします。
その糸をたてに一本ずつぎゅっ、ぎゅっ、と弾くとピンピンと音がするくらい引っ張ります。これが木綿糸だと切れてしまい、絹糸だと伸びてしまいます。麻糸は一度引っ張って指をはなしてもそのままになっていてくれるので麻糸を使います。
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あとはふつうに固結びを二回します。
もしあれば、木槌で結び目を軽くたたきます。余った糸は切ってくださいね。
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これで三つ穴とじは完成です。
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本を開くとこの通り、ちゃんと読めます。
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上下、裏表をまちがえないように表紙カバーをもとに戻します。
※使用している本は
『The MANZAI comics』
あさのあつこ 作/イマイヒヅル 絵/ジャイブ/¥590(税込)
赤木かん子
児童文学評論家。長野県松本市生まれ。1984年に、子どものころに読んでタイトルや作者名を忘れてしまった本を探し出す「本の探偵」として本の世界にデビュー。以来、子どもの本や文化の紹介、ミステリーの紹介、書評などで活躍している。主な著書に『読書力アップ!学校図書館のつくり方』(光村図書)などがある。
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