教科書の言葉 Q&A
2015年11月16日 更新
教科書編集部 光村図書出版
教科書にまつわる言葉へのさまざまな疑問について、編集部がお答えします。
第10回 「追求」か? 「追究」か?
Q:「追求」と「追究」は、どのように使い分けられているのですか。
「追求」と「追究」は、読みが同じで意味が異なる同音異義語ですが、明確に書き分けられるほどの意味の違いがなく、こうしたご質問を受けることも少なくありません。
辞書で調べると、「追求」と「追究」の意味は、次のように示されています。
「追求」……目的の物を手に入れるために手段を尽くすこと。追いかけ求めること。
「追究」……(わからないことを)深く調べて明らかにすること。
いずれも何かを求めて努力するという意味で、よく似ているだけに使い分けに悩みます。用例を比べてみましょう。
◇「追求」を使う場合
・利益の追求 ・利潤の追求 ・願望の追求 ・目的の追求 ・理想の追求
◇「追究」を使う場合
・真理の追究 ・理論の追究 ・本質の追究
意味の違いから、このように使い分けられていますが、例えば、「原因をツイキュウする」にどちらの漢字を用いるかと尋ねられても、迷うところです。
もう少し具体的にして、例えば「我が家の停電の原因をツイキュウする」なら、どうでしょう。停電の原因がヒューズが飛んだ程度なら、「追究(深く調べて明らかにすること)」では少し大げさすぎます。反対に「地球温暖化の原因をツイキュウする」なら、「追求(追いかけ求めること)」では少々物足りなく感じます。
このように考えると、研究や学問の意味合いが強いときに用いられるのが「追究」だと言えそうです。
さらに「ツイキュウ」の同音異義語には、「追及」もあります。「追及」は、「責任や犯人」を「どこまでも追いつめる」という意味で、用いる範囲は比較的限定されているので、「追求」と「追究」ほど使い分けに悩むことはないと思います。
ただし、「及」は中学校配当漢字であるため、「追及」が教科書に登場するのは、中学校以降です。
次回は、「木の葉」の読み方についてお答えします。