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教科書の言葉 Q&A 第4回

教科書の言葉 Q&A

2015年6月15日 更新

教科書編集部 光村図書出版

教科書にまつわる言葉へのさまざまな疑問について、編集部がお答えします。

第4回 教科書で使われている書体は?

Q:小学校と中学校で、教科書に使われている書体が違うのは、どうしてですか。

小学校教科書の本文では「教科書体」が、中学校教科書の本文は「明朝体」が使用されており、見比べると同じ文字でも形が違うことがわかります。

「教科書体」は、「小学校学習指導要領」の「国語」に「別表」として示されている「学年別漢字配当表」にある漢字書体にしたがって作られたものです。主として小学校の児童が筆写する際の手本にできるよう工夫された、より手書き文字に近い書体で、「書く立場から作られた書体」ともいえます。
いっぽう、「明朝体」は、新聞や一般書籍で日常目にすることが多い書体で、読みやすさに主眼を置いてデザインされた文字です。「教科書体」に対して「読む立場から作られた書体」といえるでしょう。

小学校教科書では、文字との関わりにおいて、まだ初期段階にある児童が、画数や筆遣いを誤って捉えてしまわないよう「教科書体」を使用しています。また、中学校教科書では、「読むことを目的とした文章の量が多い」「小学校6年間で漢字学習を経験してきた」などの学習の発達段階を考え、生徒が書籍などで目にすることが多い「明朝体」を使用しています。
ただ、「明朝体」はそのまま筆写することを目的とした書体ではないため、「教科書体」とは異なる特徴をもっています。例にある「糸」「表」という漢字を比べてみてください。


例に示した「光村教科書体」は、「おれ」や「とめ」「はらい」の形に一貫性をもたせ、字形もより書き文字に近いものとなるよう、光村図書が独自に製作したもので、1971(昭和46)年度版教科書から使用しています。これと「明朝体」とを比べると、「教科書体」は漢字辞典に示されているとおり、総画数は「糸」が6画、「表」が8画に見えますが、「明朝体」は、折れのたびに新たに筆が入っているように見えるので、「糸」は8画、「表」は9画にも見えます。
光村図書では、中学校段階においても、読みやすさと合わせて、書き文字の特徴を意識することができるよう、特別にデザイン、制作した「光村明朝体」を、1987(昭和62)年度版教科書から使用しています。漢字辞典にある総画数と同じに見え、「とめ」「はらい」の形に一貫性をもたせたのが「光村明朝体」です。

光村図書中学校「国語」教科書は、新出漢字を示す箇所では「光村教科書体」を使用し、生徒が字形を正しく覚えることができるよう、配慮しています。

次回は、仮名遣いに関する疑問にお答えします。

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