教科書の言葉 Q&A
2015年7月6日 更新
教科書編集部 光村図書出版
教科書にまつわる言葉へのさまざまな疑問について、編集部がお答えします。
第5回 「氷」は、「こおり」、それとも「こうり」?
Q:「氷」は、「こおり」と書くのか、「こうり」と書くのか、どちらでしょうか。
教科書の仮名遣いは、昭和61年内閣告示「現代仮名遣い」を基準にしています。
「現代仮名遣い」第1の5には、ア列・イ列・ウ列・エ列・オ列それぞれの長音の書き表し方と例が示されていますが、第1の5の(5)「オ列の長音」を見ると、「オ列の仮名に『う』を添える。」という説明があり、例として以下のような語が挙げられています。
おとうさん | とうだい(灯台) | わこうど(若人) | おうむ |
かおう(買おう) | あそぼう(遊ぼう) | おはよう(早) | おうぎ(扇) |
ほうる(放) | とう(塔) | よいでしょう | はっぴょう(発表) |
きょう(今日) | ちょうちょう(蝶々) |
ただ、原則に基づくきまりを示した第1と合わせて、「現代的仮名遣い」の第2には、表記の慣習による特例が示されており、その中の6を見ると、「次のような語は、オ列の仮名に『お』を添えて書く。」という説明があり、例として以下のような語が挙がっています。
おおかみ | おおせ(仰) | おおやけ(公) | こおり(氷・郡) |
こおろぎ | ほお(頬・朴) | ほおずき | ほのお(炎) |
とお(十) | いきどおる(憤) | おおう(覆) | こおる(凍) |
しおおせる | とおる(通) | とどこおる(滞) | もよおす(催) |
いとおしい | おおい(多) | おおきい(大) | とおい(遠) |
おおむね | おおよそ |
「こおり(氷)」の例はここにあります。また、示された例の後に、「これらは、歴史的仮名遣いでオ列の仮名に『ほ』又は『を』が続くものであって、オ列の長音として発音されるか、オ・オ、コ・オのように発音されるかにかかわらず、オ列の仮名に『お』を添えて書くものである。」と説明されています。
見ていただくとわかりますが、後ろの表にある語の大半は、普通、漢字で書かれることが多いため、実社会で問題になることはそれほどありません。ですが、まだ十分に漢字を学習していない小学生の子どもたちにとって、これらの語をオ列長音の「おう、こう、そう、とう」と区別して書き分けるのは、なかなか難しいことのようです。
ただ、特例とされている語は、これら20数語に限られています。子どもたちがこうした語の書き表し方を自然に覚えられるよう、時間をかけて指導いただきたいと思います。
次回は、小学校で学習する漢字についてお答えします。