教科書の言葉 Q&A
2016年6月10日 更新
教科書編集部 光村図書出版
教科書にまつわる言葉へのさまざまな疑問について、編集部がお答えします。
第17回 「わかる」と「分かる」の使い分けは?
Q:「わかる」の漢字表記には、「分かる」「解る」「判る」などがあります。
教科書ではこれらの「わかる」をどのように使い分けていますか。
小学校では「分かる」の漢字表記、中学校では「わかる」と平仮名表記を使っています。
「わかる」という語を国語辞典などで引くと、「事実・内容・意味がはっきり捉えられるようになる」「はっきりしていなかったことに区別がつく」などの意としての「分かる」の他、そこから派生した意味である「理解する」「物事が明らかになる」などの意味で使用する場合には、それぞれ「解る」「判る」などの漢字が当てられています。しかしながら、常用漢字表において、「解」「判」には「わかる」という訓は示されていません。ですから、教科書内で使用できる表記は「わかる」「分かる」の2種類です。この二つを意味の違いによって使い分けることは難しく、中学校では平仮名表記の「わかる」に統一しています。
いっぽう、小学校で「分かる」と漢字表記にしている理由は以下のとおりです。小学校教科書内における「学習した漢字は漢字表記とする」といった、学習上の配慮のための小社の表記ルールによります。「分」という漢字は小学校2年生で学習しますが、『国語』教科書(光村図書平成27年度版)内での初出は2年上巻P72「分かる」です。新出漢字、もしくは新しい読みを学習する際には、脚注欄にその旨を示しています(【例1】参照)。
さらに、「分」の訓としてあげられている「わける・わかれる・わかる・わかつ」のうち、「わける」以外の三つの訓は、昭和48年に「当用漢字表」が改訂された際に追加された訓です。当時の文部省では「文部省用字用語例」において、「わかる」の書き表し方として「気持ちが分かる」をあげています。これに基づき、小学校では理解する、判断する意としての「わかる」は漢字表記に統一するといった歴史的経緯もあります。
本来であれば、小・中学校で表記が統一されることが望ましいですが、以上のような理由から異なった表記となっています。
次回は、会話文の「 」(かぎ)の使い方についてお答えします。