
教科書の言葉 Q&A
2015年4月16日 更新
教科書編集部 光村図書出版
教科書にまつわる言葉へのさまざまな疑問について、編集部がお答えします。
第2回 「友達」は、なぜ漢字で書き表すの?
Q:教科書では、「人たち」 「君たち」と、「たち」を平仮名で表記していますが、なぜ「友達」だけ漢字を使っているのですか。
平成22年に改訂された内閣告示「常用漢字表」には、常用漢字2,136字の字体、音訓などが示された「本表」の他に、「付表」があります。「付表」には、語として特別な読み方をするものが示されています。
例えば「七夕」は「たなばた」と読みますが、「七」に「たな」、「夕」に「ばた」という読みはありません。古く、中国語では七月七日の夜のことを「七夕(しちせき)」と表しており、日本語の「たなばた」にこの漢字2字を当てたところから、特別な読み方が生まれました。
「付表」には、このように、2字以上の漢字が結び付いて特別な読み方をする言葉が116語挙げられています。「友達」もその一つです。常用漢字表を見ると、漢字「達」には「タツ」という読み方しかありませんが、「友達」と書き表す場合に限って、「付表」に「ともだち」という読みが示されています。教科書では、これ以外の「人たち、子供たち、君たち」などは、常用漢字表に従って「たち」を平仮名表記しています。
小学校で学習する特別な読み方をする言葉には、「七夕」「友達」の他に、以下のものがあります。
明日(あす) | 大人(おとな) | 母さん(かあさん) | 河原・川原(かわら) | 昨日(きのう) |
今日(きょう) | 果物(くだもの) | 今朝(けさ) | 景色(けしき) | 今年(ことし) |
清水(しみず) | 上手(じょうず) | 一日(ついたち) | 手伝う(てつだう) | 父さん(とうさん) |
時計(とけい) | 兄さん(にいさん) | 姉さん(ねえさん) | 博士(はかせ) | 二十日(はつか) |
一人(ひとり) | 二人(ふたり) | 二日(ふつか) | 下手(へた) | 部屋(へや) |
迷子(まいご) | 真面目(まじめ) | 真っ赤(まっか) | 真っ青(まっさお) | 眼鏡(めがね) |
八百屋(やおや) |
光村図書平成27年度版小学校『国語』教科書では、特別な読み方をする言葉が出てきた箇所には、◆マークを付けて脚注に示すと同時に、5年「漢字の読み方と使い方」(P112-113)でも解説をしています。

また、小学校『国語』では、特別な読み方をする言葉の提出は3年からとしています。これは児童の発達の段階を見て、学習の負担を軽減するための配慮です。例えば「一人」「二日」は、どれも1年の配当漢字ですが、2年までは「ひとり」「ふつか」と平仮名で表記しています。
「友達」の話に戻りますが、過去をさかのぼると、接尾語の「たち」に漢字「達」を当てて、公用文・新聞・教科書などで「子供達、大人達、友達、君達」と表記していた時代がありました。逆に、昭和23年から内閣告示「当用漢字音訓表」が改訂される昭和48年までは、漢字を当てないこととし、「友だち」と表していました。
現在では、「友達」以外の接尾語の「たち」は平仮名で表記するようになりましたが、このような変遷があったことも覚えておいてください。
次回は、送り仮名に関する疑問にお答えします。